日本一野放図なクラスに訪問してきました その1 「石川晋さんという実践家」

帯広空港で初めてお会いすることになった北海道上士幌中学校の石川晋さん(以下晋さんとよばせていただきます)
第一印象は失礼ながら「ざっくばらん」
ブログや授業作りネットワークの実践家でみるような論理的でクリティカルシンキングを持っている方とは思えないほど、気さくな方でした
会ってすぐに北海道の自然や土地の話をしてくれました

晋さん曰く「日本一野放図なクラス」とうたうように
子どもたちは中学生とは思えないほど
素直で自然体のイキイキとした姿をみられることができました
おもしろいことに「野放図」を辞書で引いてみると、「ざっくばらん」ととても似た意味とのこと
子どもたちの様子がこの晋さんの印象にあるように、つながっていることを感じてしまいます

石川晋さんのクラス訪問をするきっかけは、昨年末、岩瀬直樹さんとの楽しい会合で、晋さんが岩瀬さんのクラスを訪問した話が始まりでした
晋さんは、来年度は育休で現場にはいないとのこと
また、今年度はいっさい授業を公開しないとのことを知り、ますます今ここで会っておきたい人だなぁと無理を承知でお願いメールをしたことがきっかけでした
岩瀬さんからの話もあったのか、晋さんも私の訪問を歓迎してくれるとのこと
出会いをつくってくれた岩瀬さんに感謝です

晋さんのブログ「すぽんじのこころ」http://suponjinokokoro.blog112.fc2.com/で伊垣尚人さんがやってきます!とフィーバーしているではないですか
まだまだなんの実践も浅い私が祭りのようになってしまっていることに気後れして緊張
しかし、ここではストイックに完全に私と身近な人とは切り離して二人で対話したいと思っていました
その旨を晋さんには十分理解していただき、二人だけの糠平温泉での対話が可能となりました

晋さんは一日公開することに意味があることを語ります
確かに1時間の研究授業では先生のキャラクターや勢いといったもので流せてしまうことも可能であり、本来の子どもたちの姿が見とれないことがあります
一日公開するってことは、ごまかしがききません
日頃から子どもたちにどのようなヒドゥンカリキュラムを語っているのか全て明らかにされるとのこと
こういった一日を公開する授業研究は今後の研究の方向性を変えるような気もします
教師の持っている授業の技術だけを見ている限りでは限界があります
教育は各授業の集まりででできているものでは決してありません
一部分を切り取って「発問が」「指示が」といったミクロなものを分析するだけではなさそうです
もっとマクロの視点で子どもの姿、一日をみることで何が育っているのを知ることができると思いました

さて、北海道という所を少しだけ感じたことを紹介します
この時期では、大雪山に阻まれた帯広地域は雪が少なく天候もよいとのこと
しかし、冷え込みは-10はアタリマエで、朝には-20を越えるほど冷え込むようです
晋さんと話して気づいたのですが、「きょうは11度だなぁ」と気温の読み上げに「-(マイナス)」をつけません
いかに、日頃より寒いのかが分かります
初日は糠平温泉に泊まりました
とてもアンティークな宿ですてきな空間で
食事もおいしく、地元のものを使った郷土料理が主、
それをつまみに十勝ワインで日付けが変わっても語っていました
私が一番びっくりしたことに、露天風呂からあがろうとしたとき、髪がどうもごわごわするのでさってみると
凍りつき(きっと悟空のようになっていたはず)、思わず声をあげてしまうほどでした
翌朝、音のしない真っ白な平原を真っ二つにするまっすぐな道を走らせ上士幌中学校に到着しました

中学校は新設されたばかりのようで、木のぬくもりの自然を感じ、温かい空間を演出しているもの
中心となるリビングルームの様な広場を中心に、各教室や図書室、PC室などがつながるよう広がっていてどこからでも見渡せる作りとなっていました
もちろん、教室の壁はあるものの、リラックスできる空間がつくられていました(床暖房でTシャツ一枚の子もいるほど)
ところどころ、子どもたちが撮った写真が芸術家の個展をみるかのように展示されています
センスある雰囲気でここが学校ということを忘れてしまいます

さっそく晋さんの中3教室をのぞいてみると、やや広めの教室(たぶん2クラス分の教室サイズ)を3スペースに分けられていて、机が置いてある教室、本のコーナー、隠れられる小部屋が奥にありました
教室の中に、セパレートされ一人になれる場が実際にあることはとても衝撃的で
オランダイエナプラン校にも同じように個別になれる空間が作られているのを思い出しました
小部屋では、ひげの濃くなった男子がわいわいとテトリミノを使った陣地取りのドイツゲームに夢中になっていました
サラリーマンが麻雀をするように、たわいのない対話がとてもおもしろく、私も横で座っていっしょにきいていました笑

教室には絵本やホンモノの絵画が展示され、子どもたちの誕生日の学級通信が並びます
先生が読んでいる本もすべて子どもに見える化され、どこまでもオープンでした
(もちろん私の本も並んでいました笑、魅力的な本のラインナップにとても興味を持ってしまいました)
教室一つとっても学びやすいデザインされていることに、ここが中学校の教室なのかと疑いたくなる場でした
晋さんの思いがつまっている環境デザインとなっています
子どもたちは我が物顔で「この棚はボクが組み立てた」などいろいろ紹介してくれました
この教室のオーナーシップがどこにあるのかが分かります


ここから、私が感じた3つのことについてまとめていきます
「一日の授業を追って」「聴き合う声のトーン」「教師としてのあり方」です

「一日の授業を追って」
晋さんは教室に入ってくるなり、簡単なあいさつをすませ、朝一で学級通信を読み聞かせしました
通信の内容は先生が感じていることA4サイズ1枚
そこには、震災のこととについて思うことが書かれていました
中3の子どもたちはしっとりと聴いています
中には突っ伏している子もいましたが、それでも背中で聴いていることが伺えます
しばらくすると顔をあげ、先生の方を見てから配られた学級通信に目を通していました
ちゃんと「戻ってくる」という子どもを信頼していて、別に注意することもありません
話を聴くことって「目線」や「背中ピン」といった技術だけではないなぁと思いました
形のみが先行してしまうと、聴くことの形骸化が起こりその「聴くことの価値」が見えなくなってしまいます
今回は、直接「聴くこと」の価値のインストラクションはありませんでしたが、そういう語りを積み重ねてきたことは容易に分かりました
子どもの朝の調子をはかるバロメーターになっているような朝一番の学級通信の読み聞かせでした

中1のギャラリートークの時間
まず最初に読みきかせ5分
こちらもしっとりと話を聴き、元気の良い1年生は前に自分から来て絵本の目の前に集まりま
辞書引きの時間5分程度
「登校するときに見たもの」をテーマに辞書を引いてフセン(ナンバリングも)をいれます
なかには、辞典の頭が芝生のようにフセンでいっぱいの子もいます
こういったオムニバス授業(いろいろな短い活動を組み立ててつくる授業)を実際に目にするのは私は初めてかもしれません
確かに帯で繰り返し毎時間続けることで習慣化し、辞典なら語彙が増えるといった学習の習慣化、蓄積化できる強みを感じました
また、繰り返しているからこそ、スッと作業に入れる姿が見られます
クラスでもちょっと取り組んでみようかと思いました

そして移動して、ギャラリートーク
解放された空間を十二分に活用しています
広いスペースの広場に張り出されたひとつの散文について黙って読み、その後、分からない言葉を尋ねます
その散文は秋谷豊さんの「クレバスに消えた女性隊員」
ペアトークで話し合ったことを全体で共有、ここで言い切れなかったことを今度は図書室でハガミに記入
「話せなかったこと、他の人からの意見で分かったこと、感想をかいてね」
ペアや全体で話せなかったことをここでもう一度ソロでふりかえれる秀逸な授業デザイン
たったの1時間目の授業でグループサイズ、空間活用、オムニバス授業、とても多くのものが見られました

中1の選択国語ではライティングワークショップの授業
学校中どこで書いてもよいとのこと、教室で書く子、図書室でねっころがってやっている子、写真ギャラリーがあるスペースに椅子を置いて二人で書く子など様々、美術室で書いている子もいました
晋さんはしきりに「カンファランスはしてないなぁ」と言っていましたが
「子どもの顔を見に行った」といいながら子どもたち数人の所へいき対話をしている模様
それがすでにカンファランスになっているようでした

また、子ども同士が書いた作品を読み合っている姿が普通にあります
けっして無駄話をしているのではなさそう
ワークショップ型の授業は子どもたちに任せる部分が大きく
その分、ふざけてしまったり遊んでしまう懸念があります
それを管理しようとしていろいろ手を打つけれども逆に管理されすぎで動きが固まってしまうといった悪循環、、、
ここまでスムーズに流れる子どもたちは、日々の価値のインストラクションがていねいにしみいっているから、だからこそ、信頼して任せることこと
価値をインストラクションする前に「信頼」して野放しにしてしまうからワークショップ型で失敗してしまうのではないか、そんなことを考えました
晋さんは、その価値を語り、子どもを信頼するからこそあの「野放図なクラス」でいられるのだと思います
最後に、ハンドベルの鐘を聞いて戻ってくる子どもたち
とても豊かな時間がながれていました

晋さんは「モデルは示さない」とのことを話していました
どういう意味をもってモデルといっていたのかもっとよく話をしてみたかったのですが
絵本の読み聞かせワークショップの授業では
先生が「こぶたのぶう」を読み聞かせ、そして同じ本を、家で晋さんがお子さんに読み聞かせをする姿、奥さんがお子さんに読み聞かせをする姿を動画でみせていました
途中、落ちの「ブー」を先に行ってしまうハプニングもありましたが(笑)
子どもたちはそれをとってもニコニコしながら見ています
自分をさらしているところにとても共感がもてました
ここで気づいたのが、読み聞かせの時に晋さんは子どもたちをじっくりと見つめることがたびたびあります
聴いているのか確認もあるかと思いますが、なによりも愛情を注いでいる瞬間だと私は感じました
読み聞かせは親子の関係を築いていくといった記事を以前読んだのを覚えています
絵本を読んでいるこのとき、晋さんは子どもたちの父親の姿になっているように私には見えました
この読み聞かせのワークショップとてもよかったです
クラスでも取り入れてみようと思います

また、ここで晋さんの価値のインストラクションをきくことができました
「人は読んでもらった経験でした絵本を語れない」
だからこそ、読む練習は必要なんだということ
たぶん、この日、価値のインストラクションと呼ばれるものはこれぐらいだったような気がします
すでに学ぶ価値が分かっている学習にはもう、こういった導入がなくとも自然と学び始めるからとのこと
それに響いた子どもたち、男女の垣根を越え「ここどうやってよむの?」「読んであげよっか?」と母が子どもに読み聞かせをしているような姿が教室の中で見られました

メディアリテラシーの時間
子どもたちのマスメディアについてのプレゼンでした
何よりも印象的だったのが、晋さんの「楽しみよう」
子どもたちのどんなプレゼンにも本当に楽しんでいるようでした
後に話をしたときに「子どもの創るものは全ておもしろい」と語ってくれました
なるほど、私自身、評価軸が外(テストだったり指導要領だったり)にあるからこそ、そこに照らし合わせてできているところと、できていないところの差ばかりに目がいきがち
目の前の子どもたちをもっと見つめないといけないなぁという気づきがありました
何よりも、先生が一番の良い聴き手であることは子どもを元気づけるようになっていました

プレゼン発表のとき、子どもの一人が「先生、移動して良いですか?」との問いに「それはね、移動しますって言えば良いんだよ」と応えていました
ここにも、管理することと任せること・信頼のアプローチが流れています

一日の授業を通して子どもたちに流れているものがたくさん見て取ることができました



二つ目の「聴き合う声のトーン」
晋さんの授業に参加する子どもたちには、一環して流れているものがありました
それは「穏やかな声のトーン」という文化
読み聞かせをするときもそう、授業の説明でさえもそう、その一環した「小声」は子どもたちの聴き合う文化をはぐくんでいるようでした
晋さんはいかなる場面においても穏やかな声のトーンの小声で話をしていました

私もクラスで読み聞かせをしていますが、読み聞かせの声はトーンは下がっていますし、子ども同士の話し合いの大きさもかなり上手な「小声」、授業中の学び合っているときも少しずつ良い雰囲気の声のトーンになってきていました



晋さんと二人で飲んでいる席でクラスのPA(プロジェクトアドベンチャー)の様子を見せたところ
「声がキンキンしている」とのフィードバックをもらいました
ここは気をつけているだけ「ショック」と「やっぱり」といった気持ちでした
ちょうど一年前の福島赤木小で坂内智之さんの「学び合い」授業を一日見学させてもらったときのこと
子どもたちの声のトーンが穏やかだったことを学び、以来、気をつけてきたつもりでした
3学期に入り、授業中の学び合いの姿では比較的声のトーンはキンキンしない穏やかな学び合いができるようになってきたものの、PAといった本来の素にもどったときに、キンキン声に戻っていました
まだまだ、文化となって根付いていないことに気付き大きな学びとなりました

絵本の読み聞かせを通して小声の文化を育てることを、岩瀬さんとちょんせいこさんが提唱しています
しかし、私は絵本の読み聞かせの場面を授業にも使うといっただけで終わってしまっていて、日常の姿、給食の時間や遊びの時間など、全ての所での意識に欠けていました
晋さんの指摘を受けて、小声の文化をただのツールとして使っているだけだったと分かりました

なぜ声のトーンにこだわるのかというと
晋さんは「本当の子どもの声を聴いたことがない」と話してくれました
発表のときの大きな声、学校の中には不自然な声で生活しなければならない機会が多くあり、その子がどんな声をしているのか分からないとのこと
子どもを見る(観察する)ってこういう事なんだなぁ、本当の姿をどれだけ見て取れるかなんだなぁと思います

私は声のトーンが下がることで図書室のようなムードをつくり学びへ集中できる文化を育てられることだと思います
見学に同行した山崎正明さん(この方との出会いは大きかったです!)は「声が小さいから聴こうとする」とのことを話されていました
小さいからこそ、ていねいに聴き合おうとする文化が成立するんだなぁと思いました
活気があることが授業の活発な意見発表につながっていくことだと勝手に勘違いしていました
安心安全な場があるから、しっかりと聴いてもらえる場があるから子どもたちは意見を言えるんだなぁ
声を出すスキル練習や体験だけでは「本当の子どもの声」を聞けないんということが分かりました

中3の子どもたちは給食の時間(一緒に摂らせていただきました)も休み時間も、授業時間だけでなく全てにわたって小声ですごしていました
声のトーンひとつとっても、子どもたちの姿は先生の姿とつながっていました
もっと、深く深く考えていかないといけないなぁ



最後に「石川晋さんというあり方」
石川晋さんを私が語るのはおこがましいですが語ります(笑)

私が思うに、晋さんは「学習者主体」の先生

晋さんは子どもが出発点の授業に徹底しています
その子にとって必要なことは何かで考えています
まず先に教科書や教材があるのではなく、学習する子どもが先にあるということです
基準が外にあるのではなく、子どもにあるということ
それがベースとなり授業がアレンジされていくから、あの膨大までのいろんな先行実践や「やり方」もオムニバス授業として成立しているようです

晋さんは「ビジョンというものはないなぁ」と笑って話されていましたが、語る言葉ひとつひとつは「考える子どもが育ってほしい」といった願いが込められていました
言語化したくないのか、そういうことに興味がないのか分からないですが
このへんはもっと語ってみたかったところです

子どもがまず出発点にあるから、「子どもの創ったものは全部おもしろい」といえるのでしょう
子どもたちの発表は「全ておもしろい」と終始笑っています
それは子どもたちも笑って良い、笑顔の文化を育てています
山崎正明さんも同じように「子どもの姿をおもしろがれるかだなぁ」と話してました

ついつい中学校現場で教室デザインといったことをやられていることに目がいってしまいがちですが
石川晋さんは、子どもを軸に取り組んでいる実践者、いや、イノベーターですね
校種を越えて共感できます

また、晋さんの授業には「はじまりもなく、終わりもありません」
最初のあいさつも「じゃぁ、今日はこれね」と始まり、「次は社会だよね」と去っていきます
それは、授業といったパーツパーツを休み時間でくっつけられた時間の流れではなく、授業が学びの時間であったり遊びの時間であったり、学ぶことが絶え間なく一日ずっと流れている感じを受けました
だからこそ、休み時間にも、「どの本を読み聞かせしようかなぁ。良い本はないかなぁ」図書室で選書している子どもたちがいるんだと思います
号令で区切ってしまうことだとこういった学びは途絶えてしまい、続いていかない
子どもたちにとって学ぶことが自然にながれている時間でした
もちろん、学校は教科専任制である限り教科で分かれていて、区切らなければいけない現実はあるけれど、
それを感じさせない子どもたちに学びの時間が流れていたのは確かです
もちろん休み時間にはスムーズに体育館へ移動して遊んではしていますが(笑)

こういったことをとことん明かすところがその魅力
実践のうまくいったことや行かなかったことも全て明かしてくれました
印象的だったのが
「出典を明らかにすることをボクは日本で一番こだわっている教師
出典を明記するからこそ教育が科学として積み上がっていけることなんだ」

その2に続く

とりとめもないままに思うままに書いてみましたが、誤解があるようでしたらご指摘くださいね

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Comment

ito | URL | 2012.02.14 20:45
わたしのクラスは声が大きい方ですね。
だから、常にざわざわしている感じです。
確かに声が小さくて聞きづらいと
よく聞くために、聞こうっていう気になりますもんね^^

声が大きければいいって言う事じゃないんですね^^
イガせん | URL | 2012.02.15 17:45
小さければ小さいほど、明瞭に話せるように意識しています。ちょっと意識するだけでも雰囲気がかわってくるものだなぁと思いました。書き込みありがとうございます。
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